【News】補綴物の再委託について
- 2015/6/10
- スタッフブログ
歯科補綴物の安全管理:歯科医の70%“技工再委託先”不明 歯科技工録の必要性
海外委託技工を巡り様々な課題に対して議論が行われていたが、昨今は落ち着いてきた状況になっている。しかし歯科界でもIT化が進展する中で、その歯科補綴物の製作過程が問題視され、まさに日本の歯科補綴物のトレーサビリティが問われている。
5月27~28日に開催された日本補綴歯科学会の中で、5月27日、社会連携委員会セミナーとして、「歯科補綴に関連する医療機器、歯科用材料、補綴装置の安全管理」が行われた。
座長を務めた佐藤教授は「金属を中心に行なわれてきた鋳造法から、近年はセラミック、レジン、金属などをCAD/CAM装置で加工する方向になってきている。補綴装置に安全管理に取り上げ、関連して歯科技工士法、トレーサビリティを中心テーマに各立場からの講演を踏まえて論議したい」と企画意図を説明した。
まず、和田課長補佐は歯科技工に関連する法立、告示・通知について述べ、さらに医療機器のクラス分類、承認、許可の対象物を解説。
広く社会が“安全”を求めている中で、今回のテーマにもなった“トレーサビリティ”について経緯を報告し、「平成22年2月の某テレビ局報道で、中国製の技工物(保険適用外の義歯等)に日本では、使用認められてないベリリウムが検出。業界としても看過できない事態になり、その後は、歯科医師が国外へ補綴物の作成を委託する際の使用材料等に関する基準の策定・周知、補綴物の作成工程の追跡について、専門家の意見を聞きながら検討を行なった」とした。特に、平成23年に出された、「歯科医療の用に供する補綴物等の安全性の確保」について、当該歯科医師の指示書に基づかない歯科技工が行なわれることとなるため認められない」と指示書のない再委託は禁止であることの理解を求めた。
続いて末瀬全技協会長は、最近の歯科技工を巡る動き、中国の歯科技工事情、今後の歯科技工界の展望をした。トレーサビリティに関連しては、「国内外の歯科補綴物の実態に関する研究」の報告書から、作成メンバーの一人としてポイントを説明した。「歯科補綴物の再委託は歯科技工所からの調査で42.7%であったが、委託先の歯科技工所が再委託をしていると認識している歯科医師が25.6%であった。再委託されている場合の歯科技工所からの報告について、報告なしが56.4%、無記名が16.8%と、70%近くは再委託について歯科医師は認知していなかった」とした。また、別途アンケート結果から、歯科補綴物製作の製造責任が問われる“歯科技工録”に関しても70%の人が知らない。この点も、今一度周知徹底を図る必要がある」と強調した。
また、平成17年に、厚労省から通知された「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」も言及。 この通知は、良質な歯科補てつ物等を供給するための「歯科技工所の構造設備基準」及び「歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針」によって、歯科技工所として遵守すべき基準等が示されている。「特に、歯科技工所が満たさなければならない構造設備の内容や歯科補てつ物等の質の確保を図るための品質管理が示されるとともに、“歯科技工録”、“手順書”の作成が義務付けられている」とした。
会場の参加者との質疑応答では、CAD/CAMの今後について、末瀬全技協会長は「評価が出てきており、需要も徐々に増加している。新しい歯科医療の柱になり、歯科技工の変革を促すことになると思われる」とした上で、「オペレーターは女性でも可能であり社会・時代の潮流でもある、女性の社会進出にも寄与できる。ただし、このオペレーターはどこでもできるので、極端なことをいえば自宅もできる。しかしそこは、医療としての技術であるので、自宅云々ということでなく、設置作業場所は、ある程度の環境での行うという制限は必要ではないか」と課題を指摘した。また「委託については、歯科医院が歯科技工所に出す指示書と同じものを委託先の歯科技工所に出しておけば問題はない。最初の技工所が、新たに委託する時は、大半は口頭で行っているが、そこにも、同様の指示書を出すようにすべき」と歯科医師に注意を促した。
このDcomは歯科医師向けの情報発信サイトです。
歯科に関するニュースや、求人情報・開業物件紹介・集患ツール・セミナー情報など歯科医師に関わる情報を発信しているサイトです。
会員になっていただきますと、SNSに入れるようになり、臨床の相談や、コミュニティ作成等が可能となります。詳しいdcomの説明はこちら
是非この機会にご登録ください。
新規登録はこちら